|
5月31日（土曜日） 「君は親思いのよか子やなあ。(中略) 君の人生はまだまだこれからぞ。こげんところでつまづいてどうする。」（中学校での父の敵討ちの刃傷沙汰が 失敗して相手に諭される場面）。 「あとで払うけん、通してくれんね」と見送りの人。「着いたら手紙書くとよ」と育ての母。（もう長崎にいることはできず、大阪へ向かう長崎駅での場面）。 五島弁とも微妙に違うのだけれど、やはりこの言葉は身になじんでいるというかこの本の世界がスッと身近なものになってくる感があった。 主人公は幼くして母を亡くし、やくざの親分の父は去年抗争で殺された中学生。 彼は東京オリンピック(1964)の翌年、中3で大阪の歌舞伎役者の家に預けられる。 物語は、この極道世界出身、天涯孤独の少年が歌舞伎役者として稽古をつけられ、女形として修行を重ねていきつつ進んでいく。 10代後半、彼は女形を極め頂点にある役者の演技と見て「こんなもん女と違う（ちゃう）、バケモンや」と感じる。切磋琢磨しあう相方は 「たしかにバケモンや、せやけど美しいバケモンやで」と口にする。 師匠は言う。「女形というのは男が女を真似るのではなく、男がいったん女に化けてその女をも脱ぎ去ったところにある形である」 そんなわかるようなわからないような不思議の世界へ、美しいバケモノに化けた高みへ、彼はたどり着けるのだろうか。 読んでいる途中、タイトルの「国宝」は人間国宝（「重要無形文化財」の保持者）を指すのだろうと見えてきた。 上巻だけでも恋心や友情、ケンカ、駆け引き、裏切り、別れ、スキャンダルと山あり谷ありハラハラドキドキの心躍る成長物語だった。 もう十分堪能したような。いや、彼は人間国宝にまでたどり着けるのか否か、 これからどんな浮き沈みが、人との関りが、心模様が展開されるのか、やはり下巻も読んでみたいような微妙な気持ちとなった。
もうそろそろ夏だけれど、蕪村の代表作「春の海 終日[ひねもす]のたり のたりかな」を思わせる眺めだ。 今日は大潮で、午後は干潮の時間。知人は潜って採ったテングサを岩場に干していた。昨今の地球温暖化や磯焼け（藻場の喪失）にもかかわらず収量は まあまあとのこと。「ていねいに干したり選別したりすっせん、ふつうは2千円くらいじゃばって、おがとはキロ3千円で買ってくれるとぞ。うれしか」と言っていた。 こちらもうれしくなる。
いつもと違って巣箱の入り口に数多くたむろしているミツバチ。分蜂の準備だろうか。近くに置いてある巣箱に入ってくれるとうれしいのだが。 一昨日の月。月齢（正午）はまだ2日なのだが、夜はもう三日月と呼んでいいのかも。それにしても新月の闇から生まれたばかりという風情の細くかわいらしい月だ。 5月30日（金曜日）
9年前に他界した母が育てていたものもいくつかある。それらを含め、植えっぱなしで世話をできないものも多いのに元気に咲いてくれている。ありがたい。 5月29日（木曜日） 「センス・オブ・ワンダー」(レイチェル・カーソン 1965）はまさにそんな印象の本だった。 こころが清くきれいな人だったのを感じさせる内容。56歳で亡くなるまでいつも変わらず自然への畏敬と愛に、また人間本性の善良さへの信頼に満ちあふれていた。 それがこの本の詩的で繊細、率直な文章にみごとに表れていると思えた。 「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。 残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、 畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。 もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、 世界中の子どもに、生涯消えることのない“センス・オブ・ ワンダー ＝ 神秘さや不思議さに目をみはる感性”を授けてほしいとたのむでしょう。 この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、 つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。 妖精の力に頼らないで生まれつき備わっている子どもの“センス・オブ・ワンダー”を いつも保ち続けるためには、わたしたちが住んでいる世界の喜び、感激、神秘などを子どもと 一緒に再発見し、感動を分かちあってくれる大人が少なくとも一人そばにいる必要があります」 農薬の動植物・人間への危険を訴え、歴史を変えた本の一つと言われる「沈黙の春」。ガンで死が近いことを意識しつつこの本や「センス・オブ・ ワンダー」を書いた彼女。 その根底にある自然への畏敬や生きもの・人間への愛の大きさに感服だった。
収穫祝いというわけではないが、ジャガイモ、ひき肉も交えてオムレツにした。2個作って1個は知人宅におすそ分けした。
元気なミミズも顔を出してくれて励みになる。 5月28日（水曜日） 「大貴族がある人を「愚か者だ」と言ったばあい、自分は違うと思っていてもそれを述べなくてもいい。 ただこころの中で違うと考えるのをやめてはいけない。 また彼がある人を「臆病者」と言った場合、そうでないことを示す場面を見たことがあったとしてもそれを述べて反論しなくてもいい。 自分が見たことを忘れさえしなければ」 ここには反論するとどんな危険が身に降りかかるかわからないので、自分の考えも言えない、 自分が見た事実さえ言えない閉塞した社会の状況が表現されている。 王政下のフランスの問題点、暗黒の面を告発し続けたラ・ブリュイエール。彼が上のような状況に 対して勧めたのはla conscience（内心 良心）は守ること。すなわち自分は違う意見だとか彼の言うことは間違いだと考えるのをやめないこと だった。 臆病な対処の仕方と見えるかもしれない。が、内心の独立は守る、そんな態度の勧めがこの本を書いて100年後のフランス革命にもつながったのだろう。 希望を感じる番組内容だった。
その向こう、水平線の近くにはおそらく全長４００メートル前後はあるだろう巨大船。 新幹線の12両分以上の長さとのことで、こんな大きなものがよくぞ水の上に浮かんでいることだ。 5月27日（火曜日） NHKラジオ「生きる力 立て直す力 ーリベラルアーツ教育がもたらすものー」(「宗教の時間」4月6日放送)では、この基礎を作る教育・教養教育の実践例が語られていた。 講師の上田紀行氏（文化人類学者）によれば、１９９０年代半ばから「大学はもっと社会に役立つ人材、即戦力を出すべきだ。そんな人材を育てろ。 早めに専門教育をやれ」との声が強まった。 その結果、教養科目は減らされ、学生も学問を深めるよりは評価や成績を重要視するようになった。自分の内側から、「私は何をやりたいのか、私は自分の一生を使って 何を成し遂げたいのか」という自分自身から発せられるエナジー・オーラが減ってきた。素直であり、与えられた問いを解くことは得意だけれど、問いを発見するとか 問いを作り出すことができない、またはその力が弱くなった。 そこでリベラルアーツの復権をもくろんだ(２０１０年代半ばから？)。これは教養教育とも訳されるが、ギリシア・ローマに起源をもつ「人間を自由にする技」、 人間にとってよきこと（真・善・美など）を体得するための学問である。 これを実践した結果、学生はよく議論をするようになり、本をよく読むようになった。かつ表情が明るくなったとの評判を得た。 その流れは今も続いているようだが、さて、他の大学や日本全体ではどうなのだろう。専門教育重視がより強まっているのを感じるのは部外者だからだろうか。
種がこぼれ落ちて自生のオルレアの白といいコラボだ。ニンニクのつぼみは球の先がとがっていてユニーク。
5月26日（月曜日）
夏至まで、まだ1か月近くは北側へ移動していく。
5月25日（日曜日） 鎌倉時代初期の僧侶。真言密教や華厳経を学びつつ修行に明け暮れ、庶民や武士、公家からも尊崇された人物とのこと。 釈迦との一体化を目指す修行を重ねつつも、同時に「人々だけじゃなくありとあらゆる生きものに安心を与える、安心感を与える」ことをめざした一生だった。 人が各人の「あるべきようは」を考え行い、心安らかで幸いな一生を送れるよう念じ続けた。 彼は「ありとあらゆるもの、森羅万象、そういうものをまったく掛け値なしに受け入れる、そういう巨大な許容量を持った器」だった、とは評者の言葉。 それは自分の見た夢を20代から40年近く記し続けた「夢記」にも現われている。「天女像の夢」では天女と「互いに愛撫を交わ」 しあったと。「青い重ね衣の女の夢」には「この女性の目鼻立ちや容姿は華厳宗の教えに当てはまると思った。仏の教えである。この人と男女の交わりをする人は 皆悟りのきっかけになるにちがいない。お互いに抱き合ってなれしたしみ深くあわれみいつくしんだ」との記述も。 彼は不犯の戒律を頭に置きつつも、女性への愛情や欲望はよい方向に向かうと仏道に入るきっかけになる、仏道や人々を守るという大きな愛に転換されていくと 考えていたのでは、とのこと。 まさに自然体でひょうひょうと生きた生涯だったようだ。「くまもなく 澄める心の かかやけば わが光とや 月思ふらむ」 （修行しているわたしの心が澄んで輝いているのを見て、月は間違えて自分の光かと思うかも）との歌にはまさに素直で飾らない心情があらわれている。 「虚空がわが身となる夢」は60歳で死ぬ間際のもの。「あらゆる方向に広がる虚空がわが身となる。果てしなき一切の生きとし生けるもの、草や木、川や海が私の 中にある」 虚空は宇宙とか自然と言い換えられるだろうか。それと一体となった感覚を持ちつつ入滅の時を迎えたようで、なんだかさわやかささえ覚えた。
前日の確認では20房ほどできており、来年用の種として50粒ほど採れると踏んでいた。 朝見回ったときにはもう襲われた後。見落としや食べ残しがあるのでは、せめて半分でも残っていないかと期待したが、 カラスをなめてはいけない。みごとすぎる収穫技で、ほぼすべて食べ、かじられていた。かろうじて隅っこの1房、2粒が無傷だったのみ。 もう感嘆し笑うしかない。怒りを通り越して、そんな思いだった。
鉄砲ユリは咲く寸前。あと1週間もすれば100本それ以上が一斉に原っぱのあちこちに咲き乱れることだろう。 5月24日（土曜日） 村には小さな駄菓子屋が2件あったけれど、お菓子や飴を買う余裕はなかった子どものころ。この甘さは魅力的でたくさん食べた記憶がある。 ただし、採るときに手が、そして口の中が青紫色になってしまうのには閉口した。 ところで、今日、「わたしの日々が、言葉になるまで」（Eテレ）で紹介された歌に「どどめ色」という言葉があった。 歌は藤井風という歌手の「青春病」（2021）。 「青春の病に侵され 儚いものばかり求めて いつの日か粉になって散るだけ 青春はどどめ色 青春にサヨナラを (中略) 青春のきらめきの中に 永遠の光を見ないで いつの日か粉になって知るだけ 青春の儚さを」 このどどめ色がなんとクワの実の色（ほか青ざめた唇の色や打撲などによる青アザの色など）だとのこと。 聴いたことはあるけれどどんな色か知らなかったので、なんという偶然かと驚いた。
ところで、上に記した歌に戻って、どどめ色と表現される青春とはどんなイメージなのだろう。 その真っただ中にいるときは、やはり七転八倒で苦しいことや不安の方が大きいことが多いだろうか。それをこの色で表しているのだろうか。 「青春のきらめき」は「永遠の光」ではなく「儚」いもの。 そうなのかもなとかそうだったかなとかしばらく思いにふけった。 前にも記した「青春時代が夢なんて あとからほのぼの思うもの 青春時代のまん中は 道にまよっているばかり / 胸にとげさすことばかり」 という歌詞も再び思い起こされた。 5月23日（金曜日） この言葉の語源は釈迦が唱えた八正道の一つでsati（釈迦が使っていた言葉パーリ語。正念と訳される）。が、マインドフルネスは流布している和訳はあまり見当たらない。 satiは「to remember、to recollect、to bear in mind」を意味するらしい。「今この瞬間への意識の集中」をさすようだ。 自分としては、これまで「マインドフルネス」は人の心を操るのに利用されがちではないかとか、現実逃避に誘導して生きる力を減少させるのではないかと見ていた。 しかし、この本の立脚点は「他人や外界は基本的に変えられない。変えることのできるのは自分」、「過去は変えられない。未来も不確か。 充実したものにできるのは現在のみ」、「過去を悔い、恨む。未来を不安がる。それよりは今感謝できることに目を向ける」。それを基盤として自分なりにsatiを行えばよいとする。 これは、自分なりにかみ砕いて受け取り、自分なりに無理なく参考にしていく分には、よりよく生きていく助けになるものと思えた。 ある大学での学生へのパンフレットには、 「マインドフルネスとは意図的に、今この瞬間に、価値判断することなく注意を向けることです。 べき思考によるマインドレスな状況に陥らず、より生き生きと自分らしくあるための考え方です」とあった。
所用で五島を離れ、一番いい時期を見れなかったのは残念だ。来年に期待しよう。 5月22日（木曜日） 「日本の調査で、インターネットを利用する子どもが増加しており、その利用時間も増えていることが分かった。 この調査はこども家庭庁が行ったもので、2024年度、９歳以下の子どもで、動画を見たりゲームをしたりするためにネットを利用していると回答したのは79％。 これは2018年度の57％より20ポイント余りの増加である。 またネットを利用する時間も増えていて、平日に１日平均２時間余り利用すると回答した子どもは、およそ半数に上った。 ある大学教授は「スマートフォンは親にとって育児の手助けになる面もある一方で、ルールや制限を作らないと、 生活の乱れや依存につながるおそれもあります」と 述べている」 「生活の乱れや依存」と例訳されている原文はdisorderly lifestyles or addiction。 小学生半ば以下でも80％と大半が頻繁にインターネットを利用している。 目や脳などの心身にもだけれどさらに感性や知性にどんな影響を及ぼすのか、古稀を過ぎ た身からするとマイナス面が多い気がする。その意味では 「手に負えない生活習慣や中毒につながるおそれ」と訳した方がいいくらいの重大な傾向なのではと思えた。
最近この同じ株から野バラが咲いてきて驚いた。接ぎ木をした株であるため、台木として使われた野ばらの遺伝子が今になって出現したのだろうか。
バラは香りがいいのでさらに魅力が増す。花の近くで深呼吸。香りを楽しませてもらう時間は至福のひと時だ。 5月21日（水曜日） 映画「ターミナル」（2004年 米）ではないけれど、空港内で半日過ごすことになり非日常を味わった気分だった。 欠航は福江周辺が雨と濃霧で着陸は危険と判断したためとのこと。それではと夕方の最終便に振替を依頼するが満席でキャンセル待ちとのこと。 キャンセルが出ることに望みを託し夕暮れまでロビー内で待つことにした。 身体チェックや荷物チェックを終えた者だけが入ることができ、 外界とは切り離された場所なのでなんだか空気が違って感じられる場所だ。コーヒーを飲んだり、新聞を読んだり、散策したりもするけれど、 不安を抱えている状態のせいかなんだか落ち着かない。 はたしてキャンセルは出るか、もし出なかったらどうするか。 明日の始発を予約したうえで空港ロビー内で夜明かしをすることもできるのかどうか。 結局、最終便も欠航となった。ロビーで夜明かしはできないとのことで、空港を出て博多市内に宿を探して泊る羽目になった。 「ターミナル」のように空港内で数日間過ごすということはなかったけれど、心配を抱えての半日間は再び味わいたくはない体験だった。
ここのツユクサは葉も花もくっきりとした形・色で元気だ。五島でも育てているけれど、ここまで鮮やかではない気がする。 5月20日（火曜日） 5月19日（月曜日）
今年は広島・長崎に原爆が投下されてから80年。ヒロシマを訪れたことがないという知人は、日本に生まれた者としては一度は行くべき場所かなと思っている とのことだった。今年あたり実現するのだろうか。 今年のウメは葉っぱは元気なのに実が少ない気がする。この冬、太平洋側は雨が少なかったイメージがあるのでそのせいだろうか。 昨年のウメは 記録的な不作だったけれど、今年はそうでないことを祈る。 5月18日（日曜日） 歌詞は、 「 船は世界の果てからやってきた 幻影の青空の輝き 旅人の思いを携えて(中略) 僕はずっとこの灰色の世界から抜け出したかった(中略) ＊ 僕を世界の果てに まばゆい国に連れて行って 太陽の下ではつらいことも少しは やわらぎそうだ(中略) 僕はすがりつく 自分の夢に(中略) 僕は港につっ立って 明け方まで夢を見続ける(中略) ＊リフレイン いつの日か船に乗って旅立つために 僕は働こう(中略) 子どものころの夢へ僕を運んでくれる道をたどり はるかな遠い島へと向かう そこでは生きていることだけが大切(中略) 僕はなにも悔いを残すことなく過去を捨てる 荷物も持たず解き放たれた心で 声高らかに歌いながら ＊リフレイン 」 この歌手の名前は由紀さおりの「アズナヴール 流しながら この手紙を 書いてます(中略) 朝に夕に 貴男様を お慕い申し候（後略）」（「恋文」1973） で聞いたことがあるくらい。人名なのか曲名なのかさえわかっていなかった。 今になって調べてみると、1940年代・戦後すぐから2010年代まで70年以上活躍し、本国フランスを始め世界中で愛され続けた歌手だとのこと。 この「世界の果てに」は彼の代表曲のひとつで、2018年の葬儀の時にも流されていたらしい。 https://chansonia.net/emmenez-moi/ 見果てぬ夢に向かって旅立とうとする、はやる気持ちをみごとに歌っていることだ。 初めてじっくり聴いてみて、味わい深い映画を一本見終えたような至福感を覚えた。
5月17日（土曜日） モノづくりの会社を定年退職し、堅物でいこじな性格がますますエスカレートしている男。団地のルールを皆に厳格にかつ皮肉を込めて押し付ける日々で、皆に嫌われている。 妻の死も重なり、この世に希望はないと自死を決行するまさにその時に隣人が引越しのあいさつのチャイムを鳴らす。 夫婦とも中南米出身で言葉はスペイン語がメイン。そこから来るちょっとしたコミュニケーションのずれの微笑ましさに加え、娘二人も含めた4人の天真爛漫さ、明るさ、 前向きさがいい。まさに死神をも蹴っ飛ばして進む生命力があふれているさまがわざとらしくなくて好感が持てた。 さらに雪道で凍えつつ愛情引き出し視線を強烈に送ってくる迷い猫も加わってはさしもの氷の心臓も温かさを取り戻していかざるを得ない。 この映画は「幸せなひとりぼっち」(スウェーデン 2015）のリメイク。こちらも主人公の偏屈さや深い悲しみとそこからの再生をみごとに描いていて、 国民の5人に 一人が見たほどの大ヒットだったとのこと。どちらも甲乙つけがたい作品のようで、いつか味わってみたいものだ。
茎をおひたしにしていただいた。フキノトウだった時の苦みもまだ少し残っている感じで、気持ちまでシャキッとする味・おいしさだ。
眼下の緑は日々濃さを増してきている。緑の濃さの度合いはもう夏本番だ。 5月16日（金曜日）
「ロリポップ」は淡く透き通った感じのピンクで清楚な感じがいい。 「ロリポップ」と聞くと、すぐに映画「スタンド・バイ・ミー」(1986 米）のなかで流れ、つられて皆で踊っていた歌が浮かぶ。 まさに心まで踊るような軽快な音楽・歌声だった。 映画は少年たちの短い旅の中で青年への扉が開かれ大人の世界に少しだけ近づいていく姿が描かれ心に残る作品だった。 野宿の夜、彼らは親や家庭への不満、自分に自信が持てない苦しみ、未来に希望が持てないことへの不安などを告白し合う。10代半ば、自分が何者なのか、大人になったときにどんな日々が待っているのか何も見えないことへのヒリヒリした 感覚。それを共有した旅はすぐに終わる。 その旅が、その時間がいかに瑞々しく貴重な宝であったことかがみえてくるのは数十年後。それだけの時間が必要だった。 とはいえ、それが宝として思い起こされる時、彼の今とあの時という二つの時間は溶けあいつつ胸を熱くし満たしていく。 それは映画をみているこちら側にも同じ思いを湧きあがらせる。 そんな映画だったなと懐かしく思い出した。
驚異的なのは咲く期間の長さ。2月に咲き始めて3ヶ月を過ぎた今になってもまだ元気よく咲き続けている。 室内で世話し、かつ湿度や温度の管理がうまくいっているせいもあるのだろうけれど、この長さにはもっと感謝せねば申し訳ない気がしてきた。 5月15日（木曜日）
5月の満月の呼び名は「フラワームーン」とのこと。花がたくさん咲く時期だかららしい。 ちなみに6月はストロベリームーンだそうだ。
そういえば、冬はくっきりと見える日が多かったスカイツリーや東京タワー。ここ数日は霞んで見えない日が続いている。 5月14日（水曜日） 早朝4時からの「明日へのことば」は姉崎みよ子氏（74歳 江戸・吉原伝統芸能の会代表）へのインタビューだった。 中学生の時から江戸時代より続く吉原の料亭で民謡・踊りを習い、座敷に出る日々。卒業後はそこに住み込みで江戸時代から吉原に伝わる伝統芸能を身につけ、芸者となる。 70を過ぎた今も若い世代の指導を続けているとのこと。 昭和26年生まれといえば小生とあまり歳は違わない。中学時代から吉原で働き続けてきた人生を振り返ってのことばは重みがあり、かつ興味深かった。 身体の動きや声音、歌い方など伝統の形をたたきこまれ、身体で頭でおぼえさせられる。しかし、最後の一線は自分なりに工夫し自分のものとしなければならない。 そのさじ加減を語るようすは、淡々としているけれども芸のすごみを感じさせられた。 苦界として見られがち、かつ今年の大河ドラマの舞台にもなっている吉原。当たり前だけれど、そこでも昔も今も庶民の生活が息づき、昔の伝統芸能が今も 根を下ろし続けているのだなとうれしくなった。
これが夏になると雪が解けた後に草花が芽を出して緑の世界に。さらには沼が出現してその水面に山をきれいに映すようだ。 その時期にまた来る機会があるだろうか。
それにしても上の方のブナの根元はまだ2，3メートルの深さ。そんな雪を溶かして地表を露出させるとは、ブナの生命力には脱帽だ。 体温?がよほど暖かいのだろうか？
サクラやツツジが咲き乱れ、新芽のやさしい緑と青空がいいコントラストだ。 5月13日（火曜日） 朝3時に起きてのまだ夜中の高速道。ラジオは作詞家・伊藤アキラ特集。その中で「裏窓」という歌が流れた。 「表通り見おろす 窓もあれば 裏通りを見つめる 窓もあるわ 私が今まで 暮してきたこの部屋 見えたのは いつも裏街 (中略) 私は裏街のあなたを見ていた あなたは裏窓の私を見ていた」 高橋真梨子の歌声はしっとりでハスキーな中にも透明感があって、真夜中の車中をもの悲しくも豊かな空間にしてくれる感じだった。 「裏窓」といえば、往年の傑作と言われる同名の映画（1954 米）を最近見た。 70年前の作品とはいえ、孤独、介護、恋愛、キャリアアップなど今も変わらない人びとの営みの描写はみごとだ。 裏窓からみえる向かいのアパート。音は聞こえないけれど、各部屋の人たちの人間模様は一目瞭然。 ヒッチコック監督のすごさは、登場する庶民それぞれの喜怒哀楽や心の動きを音声なしで表現しきれていること。 それに適度なユーモアも加えつつ時が過ぎても色あせない物語をみせてくれることだ。
4時間半の登り。1時間半を過ぎたころから雪上歩行となり、2～3メートルほど積もっている雪の上を歩いた。
間にあるのは雪のみのせいかけっこう近くに感じられるのに、歩いても歩いても頂上は遠いままという感じだった。
ほぼ風はなく、夏の浜辺にいるかのような暖かさ。3，4メートルの雪が積もっている山の頂上にいるのが信じられないほどの心地よさだった。 北には飯豊連峰が見えており、西には越後駒ケ岳、平ケ岳が。まだ登ったことのない山だ。 南西には燧ケ岳と至仏山が間近に見えており、その間の尾瀬ヶ原はうっすら。 清浄な空気の中でこんな絶景を味わわせてくれて、山の神様に感謝だった。 5月12日（月曜日） 20世紀初頭のアルプス山中、私生児として生まれ、預けられた遠縁の村で幼い時から奴隷同様に農作業をさせられる少年。 そんな逆境を乗り越えてたくましい若者に成長し、山中の現場労働者として職を得る。一生をともに過ごしたいと熱望する女性に出会い結ばれる。 だがそれはつかの間の幸い。自然の脅威にすべてを奪われ、無味乾燥な日々を送る労働者に戻った彼。さらに、戦争に駆り出されて外国に派兵される。 戦後も長く捕虜生活を送ったのちやっと村に帰り、また肉体労働や山のガイドをしつつ孤独なまま老いていく彼。もう90歳前後だろうか、 死を迎えるときに何を思いつつこの世に別れを告げるのか。 ここまでネタバレに近いことまで書いてしまったが、映画では彼が死ぬときあちらの世界に行く狭間（はざま）で思ったことが語られる。 「すべての人のように俺にも希望や夢があった。いくつかはかなった。でも多くは手が届かなかった。手が届いたと思ったのに奪われてしまうこともあった。 俺はどこから来たのか思い出せない。どこへ行くのかもわからない。でも今 この狭間の時間に人生を振り返ることはできる。ただただ驚きながら。 もし俺がそれほど疲れていなければ しあわせな気持ちで笑うことができるだろう」 紆余曲折を経ながらもみごとに生を終えた男の物語、「ある一生」だなと清々しく見終えた。時折り写されるアルプスの谷のようすや花々、遠くに見える 雪の山々などの景色にも心を癒された。
春先におひたしにして食べていたシュンギクはもう花が咲いてきた。春の香りをたくさんいただいたことに感謝。
大きめで豪華、インパクトのある桃色系の花のシャクヤク。「立てば芍薬 座れば牡丹」と詠まれるわりには両者の背丈はほぼ同じだ。 なのになぜこの歌が流行ったのかちょっと調べてみた。 シャクヤクの花はこの写真の通り上に伸びた枝の先に上向きで咲くのに対し、ボタンは少し低めの箇所に咲き、かつ横向き。この違いが心をとらえ あの歌を詠ませたようだ。 5月11日（日曜日） 日本古来の伝統芸能をベースにした演目とのことゆえ、静けさの方が優っているのだろうと予想していた。 予想に反して、思っていたより数倍の力強さ、激しさ。にもかかわらず、繊細な音色や動きも織り込まれていてまさに魂が震える体験だった。 前身の「鬼太鼓座」設立(1971)には民俗学者の宮本常一も関わったとのこと。日本古来の伝統芸能が大地に根付いて今も受け継がれていることを再確認だ。 まさに「畏るべし」 という漢字を使いたくなる濃密な時間だった。
太古の時代、人が自然の一部として共に生きていた折りには内部に満ち満ちていた力、内側に熱く燃えていた火。 それがいまよみがえっているような、共に追体験させてもらっているようなひと時だった。 5月10日（土曜日）
東の新宿方面の高層ビル群も北西の奥多摩方面の山々も、まるで消えてなくなってしまったかのような風情だ。
ジャーマンアイリスは生命力旺盛。ツユクサは露がついている様子が気持ちを和ませる。 5月9日（金曜日） 政府は今年、初めて農産物関連の目標を設定した。内容は訪日客が消費する飲食費を2030年までに4.5兆円にする（2023年度の3倍）、 海外でも日本食文化を広めそこでの収益を 3兆円に増やす（2022年度の2倍）というもの。 5年ほどの間に3倍、2倍というのはなかなか強気だなという気がした。 ところで「訪日客」の読みについて、長年「ほうじつきゃく」と思っていた。今回この言葉をパソコン入力しても出てこないので調べてみると、 「ほうにち」が正しい。 数10年のあいだ間違い続けていたことに赤面だった。 話はまた変わって、「訪日」という言葉は手元にある古い広辞苑(1969 第2版）にはない。その頃は海外から来る人も海外に行く人も少なかったせいなのだろう。 それが1970年代末には初めて100万人を突破、2002年に500万人超え、昨年の2024年は3887万人（消費額8兆円）だった。 そして、2030年までに6000万人（消費額15兆円）を目標にしているとのこと（日本政府観光局などによる）。 ずいぶんと高い目標だ。日本の魅力発信もだけれど、国際平和があってこその期待できることだなと思った。
ツワブキは昔五島で数回だけ食べたことがある。普通のフキに比べてアクが強いせいだろうか、たくさん自生している割には食べることは少なかった。 あちこちにヤツデがあり、葉は新緑に輝いている。時間があったので名前の通り8つに分かれているのかなといくつか数えてみた。 8つは少なく、9が、次に7が多かった。 調べてみてもその傾向が強いらしい。「天狗の羽団扇」という別名があることも知った。
たった4時間ほどで違った印象になっているのに驚く。 東の方にあった17時過ぎは少し上方から陽に照らされ、南に来た21時過ぎは右の方向から照らされているせいなのだろう。 5月8日（木曜日） 主人公の若者3人は皆いつも胸中がガサガサとざわついているというか、胸に棘が刺さっているというか、そんな風情が切なかった。 見終わった後、何とはなしに「青春時代」（森田公一）の歌詞が頭に浮かんできてふと口ずさんでしまった。 「青春時代が夢なんて あとからほのぼの思うもの 青春時代のまん中は 道にまよっているばかり 青春時代が夢なんて あとからほのぼの思うもの 青春時代のまん中は 胸にとげさすことばかり」 青春時代とは普通は10代後半から20代前半をいうのだろうけれど、一日や一年の始り付近には新鮮さがある気がするし、まして今は春の盛りだ。 青春時代の香りがする季節といえるかも。 映画の話に戻ると、足のケガでフィギュアスケートチャンピオンへの夢を絶たれ、今はバスツァーガイドとして毎日ヘトヘトの女性。エリート教育の 競争に勝ち残って人もうらやむ企業で大金を稼いでいるけれど心を病んで心療内科に通う男。親戚のレストラン手伝いとして働きながら 何の目当ても持てないでいる男。 「道にまよって」「胸にとげさす」日々を生きている3人の出会いと数日間の交流、短い旅。 20代であれ70代であれ、人は一生のうちに何度かは「胸にとげさす」思いを味わうことがあるだろう。 この映画が多くの人の感動を呼んだのは、観客が昔味わった、今そしてこれから味わうかもしれない自分事ととらえたからでは。 また、ほのかにだけれど灯ったように見える再生の希望の光にエールを送ったからではと思えた。
最近はカワセミには会えず残念だけれど、今日はコジュケイに出会った。 人をあまり恐れず小道ややぶでエサを探している。 昨年はつがいだったのがこの春は1羽だ。相方が自然破壊で死んだり去ったりしていないことを祈る。
イエローアイリスは淡いけれど輝きのある黄色だ。姿・色ともに楚々としていてかわいい。要注意帰化植物だとは初めて知った。 5月7日（水曜日） 5月6日（火曜日） 北朝鮮との国境の町。喜びや希望のない今を生きている若い男女3人の出会いとつかの間の旅のようすが描かれる。 「全部終わらせたいと思ったことは？」 「どこも同じだ」「（いや）違う場所だってある」 「もうすぐ夜明けね」 雪の長白山、その山上の神秘の天池をめざす旅は思いもかけない出来事やハッとする言葉の連続。 物語はモノクロに近い、かつ光を抑えたシーンが多く、全編を通して哀しさや虚しさが静かに表現されていく。それなのに、見終わって温かい思いがわくのはなぜだろう。 3人それぞれの胸に再生の光がほの見えた、または見える予感がするからだろうか。
色とりどりのゼラニウムは強い種だ。 パンジー、マーガレットは花期が長くてありがたい。後者は多年草？で、種蒔きをせずとも 毎年ピンクとベージュを混ぜたようなやさしい色の花を咲かせてくれることだ。 花はとっくに終わったツバキの横ではアジサイが無数の花芽？を持って元気に育っている。 5月5日（月曜日）
ネモフィラはまさに淡い青の海。人は写真撮影に余念がないなか、ミツバチはせっせと蜜（花粉）を集めている。花が小さく蜜が少ないせいだろうか、一つの花に 留まる時間は一瞬。忙しい動きだ。 とはいえ、後ろ足?の両側にはまん丸団子状の花粉を大量に持っている。ついがんばれ！と言いたくなる光景だ。
トランポリン、ハンモック、そして霧のガーデンでも子どもたちが大はしゃぎ。心なごむ光景だった。 5月4日（日曜日） 前に会った時はハイハイを卒業し立ち歩きできるようになったばかりの妹を可愛がり、かいがいしく世話していて、まさしくよきお姉ちゃんだった。 それが今回は微妙な変化が。自己主張し、ときには両親の愛情を独り占めにする妹に対し、強く当たったりきつく言ったりする場面があった。 挙句には「3歳の時の方がよかった」とはっきり言う場面も。 一生のうちひと時しか味わえない一人で両親の愛情を独占できる時間。もう決して戻ってくることはない至福の時。それを明確に言語化し自覚して 懐かしがっているわけではなかろうが、やはりあの頃はよかったとの思いは強くあるのだろう。 みていて五島弁でいう「あらよー、つんだひかね」という感慨がわいた。哀しく寂しい感じの人に対し共感と激励の思いをもってかける言葉だ。 彼女が新たな熱くなれるものに出会い、そちらに気持ちが向いて晴れやかに生きられるよう祈った。もちろん、姉妹が新たなよき関係に進んでいくことも。
静かな風情で道脇にはいろんな花が咲いていることだ。
途中の草むらで出会う虫や幼虫はかわいい。でもヒルが足にくっついていて血を吸っているのに気づいたときはさすがにあわてた。 5月3日（土曜日）
まだ雪が残っている富士山や北西の奥多摩連峰にはもう少しで日が当たりそうだ。 それにしても澄んだ青空だ。冬の清涼な空気の眺めよりは少し霞みはかかっているのだろうけど。 5月2日（金曜日） やはり不安定な経済状況や円安が影響しているのだろうか。 英語学習にかんしては、この言語は同じ言葉の繰り返しを嫌い、言い換えが頻繁に行われていることを強調していた。 本日のニュース内でも以下の言い換えが。 prediction → forecast（予想）、take trips → travel（旅行する）、abroad → overseas（外国）、 almost → close to（ほとんど）、from the same period last year → year-on-year（去年の同時期）、tourists → travelers（旅行者） よくぞまあ、と思えるほどに言い換えていることだ。 ひるがえって、日本語ではどうなのだろう。 最近知ったある本では、「語彙力とは言い換え力である」、わかりやすい文章にするためには「同一文内で、極力同じ言葉を使用しない」など ある日本文学者の言葉を引用していた。 「言葉が豊かな人」とは「語彙力が豊か」ということです、とも。 英語ほどではないにしても、日本語にも言い換えを是とする傾向があるのだろうか。 五島のわが村では生まれてからずっと語り合うのに多様な言葉はいらなかったし、農作業がメインのわが家ではなおのこと多くのボキャブラリーは必要なかった。 そのせいというわけではないが、語彙力が少ないことを自覚している身としてはちと頭を抱える番組内容だった。
東方面、新宿などの摩天楼群はいつもながら色とりどりのあやしい輝きだ。 5月1日（木曜日） マロニエの並木道と言えばたしかパリが定番だったかなと思いつつ調べてみたら、金子由香利の歌う「巴里の屋根の下」が出てきた。 https://www.youtube.com/watch?v=vA2Y6e1d4a4 「鐘は鳴る 鐘は鳴る マロニエの並木路 パリの空は青く晴れて 遠き夢をゆする マロニエの花咲けど 恋しい君いづこ パリの屋根の下に住みて 楽しかりし昔 燃える想い 愛の言葉 やさしかりし君は」 1982年発売のCDらしいが、1950年代かと思えるほどの静かで柔らかな歌い方、低めのやさしい声だ。元歌のフランス語のものに引けを取らない魅力がある。 この歌は同名の映画（ルネ・クレール監督 1930）の主題歌。映画は（テレビの映画放送で？）数十年前に一度だけみた記憶があるのだが、ほろ苦く哀しい、 けれどなにやら心が温かくなる物語だったような。 こちらも若かったので自分の身にも起こるかもしれないこととして見、味わっていた気がする。 ともあれ、マロニエの木と花を見たおかげでいい歌を聴けたし、懐かしい映画作品を思い出した。いいことづくめでありがたい。
この昼咲きツキミソウは毎年同じ場所に咲いている。種がこぼれて自生しているようなのだが、五島で種を蒔いても育たない。草を刈ったりの世話をしないと花 を咲かせられないようだ。 |
